価格弁償1.png

  遺留分減殺請求がなされた場合、現物で返還するのが原則ですが、民法は、受贈者及び受遺者が、目的物の価格を弁償することによって、現物返還の義務を免れることができるとして、価格弁償の制度を設けています(民1041条)。

 

価格弁償と減殺請求の効果.png

  受贈者及び受遺者は、価格弁償をなすべき旨の意思表示をしただけでは足りず、現実に価格弁償の履行あるいは履行の提供を行ってはじめて現物返還の義務を免れることとなり、遺留分権利者は弁償すべき価格に相当する金銭の支払請求権を取得することとなります(最判51.8.30、最判S54.7.10、最判H9.2.25)。

 

価格弁償の算定基準時.png

  遺留分権利者が受贈者又は受遺者に対し1041条1項の価格弁償を請求する訴訟における贈与または遺贈の目的物の価格算定の基準時は、訴訟の事実審口頭弁論終結の時となります(最判S51.8.30)。

  ただし、遺留分減殺請求を受けるよりも前に遺贈の目的を譲渡した受遺者が遺留分権利者に価格弁償すべき額については、譲渡の価格がその当時において客観的に相当と認められるときは、その価格を基準として算定するとされています(最判H10.3.10)。

 

判決主文.png

  裁判所は、事実審口頭弁論終結時を算定の基準時として弁償すべき額を定めた上、受遺者がこの額を支払わなかったことを条件として、遺留分権利者の請求を認容すべきであり(最判H9.2.25/同H9.7.17)、具体的には、以下のような主文となります。

 「被告は原告に対し、被告が原告に対して○○円(裁判所が定めた価格)を支払わなかったときは、本件不動産の持分○○につき、平成○年○月○日遺留分減殺を原因とする所有権移転登記手続きをせよ。」

 

  また、遺留分権利者からの請求が物の引渡請求の場合、民執法174条の適用がないため、以下のような主文となります。

  「被告は原告に対し、被告が原告に対して判決確定後○日以内に○○円(裁判所が定めた価格)を支払わなかったときは、○○を引渡せ。」

 

終期.png

  事実審(控訴審)の口頭弁論終結時までに少なくとも価格弁償の意思表示をする必要があると考えます。

 

 

その他の問題点.png

1 受贈者又は受遺者は、複数の財産の贈与又は遺贈を受けた場合、各個の財産ごとに価格弁償するか否かを決することができるでしょうか。

  この点に関し、最判H12.7.11は、「受贈者又は受遺者は、民法1041条1項に基づき、減殺された贈与又は遺贈の目的たる各個の財産について、価格を弁償して、その返還義務を免れることができるものと解すべきであ」るとして、これを認めています。

 

2 贈与・遺贈が未履行の場合、受贈者・受遺者は、目的物の価格を弁償して、目的物の引渡し等を求めることができるでしょうか。

  1041条2項を類推して、これを認めるべきと考えます。

▲このページのトップに戻る