遺留分権利者が負担すべき相続債務額

1 相続債務が可分債務(借入金など通常の債務は可分債務です)の場合、原則として、共同相続人が法定相続分に応じて債務を負担することになりますので、これによって計算された負担債務額を控除することになります。例えば、相続債務が1000万円あり、相続人が子2人の場合、子が負担すべき債務額は1000万円×2分の=500万円ですので、500万円を控除することになります。

 例外的に、包括遺贈がなされ、包括受遺者が遺贈を承認(民法990条ではなく、915条1項の「承認」の意味です。)した場合、債権者との関係でも効力を生じるため、控除すべき債務額は、包括遺贈を考慮して修正された相続分を基礎として計算することになります。

 

2 遺留分権利者が対債権者との関係で負担すべき債務額と対共同相続人との関係で負担すべき債務額が異なる場合、後者を前提とするべきというのが多数説です。

  この点に関し、最判H21.3.24は、相続人の1人に対して財産全部を「相続させる」旨の遺言がなされた場合において、遺留分侵害額の算定にあたり、相続債務の法定相続分相当額を加算すべきかが争われた事案において、「相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言により相続分の全部が当該相続人に指定された場合、遺言の趣旨等から相続債務については当該相続人にすべてを相続させる意思のないことが明らかであるなどの特段の事情のない限り、当該相続人に相続債務もすべて相続させる旨の意思が表示されたものと解すべきであり、これにより、相続人間においては、当該相続人が指定相続分の割合に応じて相続債務をすべて承継することになると解するのが相当である。」と判示した上で、「相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされ、当該相続人が相続債務もすべて承継したと解される場合、遺留分の侵害額の算定においては、遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することは許されないものと解するのが相当である。遺留分権利者が相続債権者から相続債務について法定相続分に応じた履行を求められ、これに応じた場合も、履行した相続債務の額を遺留分の額に加算することはできず相続債務をすべて承継した相続人に対して求償し得るにとどまるものというべきである。」と判示しています。

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